CLUCTと親交の深いアーティストを掘り下げるTHE PROFILE、今回はグラフィティをアートの世界に引き上げたオリジネーターであり、アーティストとして今年で活動50周年を迎えたグラフィティ界のゴットファーザーChaz Bojórquez(チャズ・ボホルケス)をフックアップ。彼に関する良質なアーカイブ記事をリライト、前編(History/後編(Works)の二回に分けてお届けします。

 Chaz Bojórquez(チャズ・ボホルケス)が描いたCLUCTブランドロゴ。
 

 

ロサンゼルスのアーティスト Chaz Bojórquez60年代後半からグラフィティライターとしての活動を開始し、グラフィティ界のゴッドファーザー的存在でありながら、今やストリートアートの枠を超え、現代のチカーノアートシーンを代表する一人としても高く評価されている。そんな彼の歴史や輝かしい業績を追っていきたい。

 

 1949年、ロサンゼルスのチャイナタウンにて生まれたCharlesChazBojórquez(以下、Chaz)。その後、ダウンタウンからも近いハイランドパークへ移り住み、このエリアが彼にとって現在まで住み続ける長年の地元(フッド)となっている。

 子供の頃から絵の才能に溢れていた彼は高校を卒業後、Chouinard Art Instituteという伝統あるアートスクールへ通うようになり、在学中の1969年に“Chingaso”というストリートネームでグラフィティを描き始めた。10代の頃、彼は自宅近くに流れていた川の排水用のトンネルにて1950年代から60年代に描かれたと思われるグラフィティ(ロウソクやライターの煙によって描かれている)を見つけ、これが彼のグラフィティの原点にもなっている。ロサンゼルス最古とも言われるそれらのグラフィティはすでにチョロ(Cholo)と呼ばれるメキシコ系アメリカ人独特のスタイルで文字(レター)が描かれていたという。

 ちなみにChazによる最初のグラフィティは彼自身のタグとともに、ステンシルを用いて“Señor Suerte”(Mr. Luckyという意味)というキャラクターが描かれていており、この時点ですでにストリートという枠を超えた彼自身の高いアート性が伺える。

 グラフィティライターとして活動しながらも、アートスクールでは絵画と陶芸を学んでいたというChaz。そして、アートスクールの授業の一環として中国人の書道家から書道を学んだことで、チョロスタイルにオールドイングリッシュと呼ばれる古い書体、さらに中国の書道からインスパイアされたスタイルをミックスしたChaz独自のレターが完成されていった。

 世界中の様々な文化を体験するために35カ国を巡る旅をした後に、30代前半には映画制作の仕事に携わるようになり、『The Warriors』、『Cheech and Chong』、『Boulevard Nights』、『Caveman』、『Breakdance』など様々な映画にてグラフィックを手がけるようになる。現在も様々な形でコマーシャルワークを手がけているChazだが、その原点は30代で行なっていた映画仕事がその出発点となったというわけだ。

 1982年に製作されたヒップホップムービー『Wild Style』でも描かれていたように、NYにてグラフィティの発表の場がストリートからギャラリーへと移行していった頃、Chazもキャンバスにてグラフィティ作品を描くようになっていった。そして、1984年にはハリウッドのZero One Galleryにて最初のアートショウを開催。さらに1987年にはKeith HaringFuturaらと『Future Perfect』というグラフィティのグループ展も行なっている。

 90年代に入り、メキシコ系アメリカン=チカーノアートを代表するアーティストとして評価が高まっていったChaz。アートコレクターとしても知られるNicolas CageCheech MarinCheech & Chong)といったハリウッド俳優やVan HalenのボーカルであるDavid Lee RothといったセレブリティがChazの作品をコレクトするようになったことがそのきっかけの一つであるが、さらに現在ではLACMAMOCAといったカリフォルニア内の美術館やアメリカを代表する博物館であるスミソニアン博物館なども彼の作品を所有しており、このことからもChazがアメリカを代表する現代アーティストの一人として認められていることが判る。

 2000年以降はアメリカを代表するグラフィティクルー THE SEVENTH LETTERの一員としても積極的に活動し、若い世代のグラフィティライターにも強い影響を与え続けている。その一方で様々なクロージングブランドやスニーカーブランドとのコラボレーションを行なったことで世界中のストリートカルチャーシーンにもChazの名前は幅広く浸透。70歳となる現在もその勢いは衰えることを知らない。

 Kiwamu Omae氏による文章を一部改編)

 後編はこちら

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